【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
首筋をそのまますべらせた指先で撫でられて、ぴくっと肩が揺れる。
えっと、とまっすぐな視線から逃れるようにポケットに視線を向けて手でそれを引き出すと、「なんで外してんの」とまたため息。
そのままネックレスを、ポケットにしまおうとした瞬間。
その手をつかまれたかと思うと、彼が自分の方へ手を引き寄せた。
「……莉胡」
「……、はい」
「あいつに何されたの」
怒っているわけじゃなくて。
穏やかな声で聞いてくるから、心配してくれてるっていうのはわかる。ポケットから出てきたネックレスチェーンが千切れてるんだから、これでも千瀬はかなり精神をおさめて聞いてくれてるんだろう。
きっと、内心はものすごく怒ってるはずだから。
「ちょっと、はじめに言い合いになったっていうか……」
「………」
「だってほら、いきなり車に乗せられたら誰だってびっくりするでしょ?」
「……車に乗せられた?」
「あっ」
まずい。
思いっきり言っちゃったよわたし……!
「……"あっ"っていま言ったよね?
完全に口滑らせたよね?どういうこと?」