【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「今日から抱きつくのもキスも禁止ね」
「えっ、そんなの無理……!
添い寝のお泊まりもだめなの!?」
「だめに決まってんでしょ。
莉胡が嫌がるのわかってるからお仕置きなんだよ」
「い、つまで……?」
「俺の誕生日来るまで」
長すぎる……!
そんなの絶対耐えられるわけない。毎日毎日、千瀬の愛情が欲しくてたまらないのに。抱きつくのも禁止されたら、ふたりきりでいる時間もただの地獄だ。
やだ、と言えば、「だめ」とそっけなく返される。
むりむりと首を横に振るわたしに、「どれだけ俺のこと好きなの」とあきれた声。好きじゃなかったら怒るくせに、ぜったい理不尽……!
「抱きつくの禁止されたらさみしくて死んじゃう……!」
「安心しなよ、さみしくて死ぬのはうさぎだけ」
「わたしのお気に入りの部屋着はうさぎだもん!」
「全然関係ないじゃん……」
「とにかく、やだ……!
それ以外ならなんでもいいから……!」
お願いと何度もわがままを言うわたし。
だけど抱きつくのを禁止されたらほんとにさみしくて困る。やだと言っても変えてくれない千瀬を見ていたら、今度頭に浮かんだのはなぜか怒りで。
「……じゃあ、もういいもん。
千瀬はどうせ我慢できるぐらいわたしのこと好きじゃないんでしょ?1ヶ月以上抱きつかれなくてもキスしなくても平気ってことでしょ?」