【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
なぜか楽しそうな千瀬に、引き気味のわたし。
……あれ、構図がおかしいな。ラブラブなカップルのはずなのに、なんでこうなってるんだろう。
「俺の誕生日までデートしないか、
お互いの家の行き来禁止するか、」
「え、えっ待って、どうしてすぐにそうやってわたしをいじめようとするの。
彼女いじりはずるい……っ!」
「毎朝起こしに行かないか……
ああ、莉胡のことしばらく他人行儀に呼ぶとか?」
「泣く……そんなのぜったい泣く……」
「……あのさ。
聞いてる限りものすごく俺のこと好きみたいに聞こえるけど、ならどうして俺のことちゃんと頼んないの?」
ふと。
真剣な声で聞いてくるから、ぐっと口をつぐむ。……頼りたくないわけじゃないし、お見合いのことだって、べつに黙ってなくてもよかった。──だけど。
「……いやなとこ、見せたくない」
「………」
「千瀬が嫌だって思うのわかってるから……
内緒にしておいた方が、いいと思って、」
お見合いなんてするの知ったら、絶対千瀬は嫌がる。
ヤキモチや嫉妬だなんて言えばかわいく思えるかもしれないけど、言い換えれば彼に嫌な思いをさせてるわけで。
「……突き通せない嘘で隠されんのが、
正直俺はいちばんむかつくんだけど」
「………」
そんな思いをさせたくないからこそ、黙っているのに。
いつも隠しきれなくて、結局嫌な気持ちにさせてしまうのは、わたしの悪い癖だ。……もっと千瀬を傷つけない方法を、うまく見つけられたらいいのに。