【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「お昼行く? それとも、今日は東?」
「んー……どうするのかな」
東行くんだろうか、と。
千瀬を振り返ったら、トモを間にはさんで織春と千瀬が何か深刻そうな顔で話し合っていた。
何かあったのかなと不安になった瞬間、わたしの視線に気づいたようで、千瀬はふっと微笑みかけてくれる。
……っ、なにそれちょっとときめくんですけど!
「ふふっ、莉胡ちゃん千瀬くんとラブラブだよね」
「……由真ちゃんだって織春と仲良しじゃない」
「だって千瀬くん、
ほんとに莉胡ちゃんしか見えてないんだもん」
べつに千瀬くんのこと好きってわけじゃないけど、なんだかちょっと妬けちゃう。
そう言ってぺろっと舌を出した由真ちゃんが笑うから、やっぱりかわいい子だなと的はずれなことを思った。
「千瀬。
このあとどうするか決めてる?」
教室について、クラスの前でようやく話を終えたらしい彼に尋ねてみれば。
一瞬悩んだ千瀬は、「東に顔出しに行こうかな」と答えてくれた。
月霞7代目。
十色が乃詠さんやほかの幹部と引退して千瀬がその肩書きを受け継いだのが、先月。わたしも新しい月霞の姫としてそこに参加させてもらったけれど、「やっぱり俺のとこに来ない?」と冗談で言った十色に千瀬がイライラしてた。
イライラしてたし、引き継ぎが終わってからは油断しすぎだとか十色さんは莉胡のことまた揶揄ってるだけだとか散々怒られて、そのあとはもうご想像に任せる。
千瀬は付き合ってから割と感情を出してくれるようになったし、欲求も素直に言ってくれるようになった。
それはうれしいんだけど。
あんまり素直に求められても、困るっていうか。
「莉胡も一緒においで。
ミヤケに、莉胡も連れてくって連絡するから」