【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「莉胡のやってることって。
わかりやすく言えば、それっぽい証拠があるのに"浮気なんてしてない"って言ってるのと同じぐらい、見え見えの嘘だよ」
「………」
「もうさ……嘘つくのやめたら?
いままではこうやって何とかなってきたけど、もし莉胡になんかあったって後で知ったら、俺どうすればいいの?」
その瞳が苦しげにわたしを見据えるから。
そこでようやく、千瀬の言っている意味に気づく。……何度も何度も、千瀬はわかりやすく伝えてくれていたのに。
「莉胡がちゃんと言ってくれてたら、なんかあったとしても、対応してやれるけど。
……莉胡に嘘つかれたら、なんかあったって知ったところで俺はどうすることも出来ないじゃん」
「……千瀬」
「……いままでこういうこと繰り返してきたのは、わかってるけど。
いまも莉胡は俺に対して嘘をつかないって信じてるから。……嘘ついてても責めたことなんてなかったでしょ」
──月霞から、追放された時。
もちろんあれはわたしと十色による嘘からはじまった。……だけど、千瀬は、あとから真実を知っても、一度たりとも嘘をついていたことを責めたりはしなかった。
いままで、こんなことが何度もあったのに。
冗談まじりの会話をしている時以外、千瀬に「嘘ついてるでしょ」なんて、言われたことない。
「たとえそれが嘘だってわかってても……
俺は嘘じゃないって信じてたいんだよね」
「、」
「だって俺が信じてやらなきゃ、
……いったい、誰が莉胡のこと信じんの?」
くっ、と胸の奥が苦しくなった。
じわりと瞳に浮かぶ涙を拭うために、彼の背に回した腕を離す。……泣いても、涙を落とすのはだめだ。落とす前に拭わなきゃ、ただのずるい女になる。
「わたしの……
自分勝手で中途半端な気持ちは、迷惑……?」