【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
膝立ちの状態からぺたんと座り込んで、正座にもどる。
拭った涙の先で、千瀬が「正直ね」と答えるから、わたしの考えは完全に間違っていたらしい。
ほんとわたしって、面倒な女だと思う。
……そばにいてくれるのは、千瀬ぐらいだ。
「お見合いなのにどっちも両親が来ないなんて、前代未聞だと思わない……?
おかげで車にあっさり押し込まれて、家まで連れていかれて、」
ぐす、と鼻を啜る。
さすがにもう涙は出てないけど、千瀬の愛情をひしひしと感じたせいで、胸の中が色んな感情でいっぱいだ。
「何もされなかったけど……
やっぱりわたしが、間違ってた、」
「……莉胡」
「黙ってて……ごめんなさい」
言えば、千瀬はわたしの耳元で「お利口さんだね」と褒めてくれた。
正直褒められるようなことは何もしてないし、むしろ怒られるようなことしかしてないんだけど。
「いいよ。お仕置きもナシにしてあげる。
莉胡がひとつ賢くなったご褒美ね」
千瀬が優しく微笑むから、きゅんとときめく。
「甘いな」と傍観していたみんなから口々に文句を言われていたけど、千瀬は「甘やかさないと逃げるからね」と一言。
「わたしが脱走するうさぎみたいな言い方する……」
「うさぎだって自分で言ってたじゃん」
「……そうだけど」
……懐いたら、わたしの場合は離れないんだから。
もう一度抱きついてやろうと思って、「もう正座しなくていいよ」と言った彼に甘えて、立ち上がろうとすれば。……これも予測できたことだけど。