【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
ぱたんと閉まる扉と、いまだ動けないわたし。
そして部屋のソファに呑気に腰掛けた彼は、スマホをいじってるだけで、わたしのことは完全に放置だ。
なにこれ……
放置プレイという名の意地悪なの?
「ちーくん」
「………」
「ちーくん……放置しないで」
「……放置されたくなかったらさっさと動いてこっちまでおいでよ。
俺もお腹すいたしそろそろ帰りたいんだけど」
動けないのは誰のせいだと……!
たしかに最初の原因はわたしで、千瀬に文句を言える権利なんてないけど……!
「立てるようになったら抱きついてもいい?」
スマホの液晶を撫でていた手が止まって、ちらりとわたしを一瞥する千瀬。
「好きにすれば?」と冷たく返されたかと思えば、ポケットにそれをしまった千瀬がわたしの元へ歩み寄ってくる。
目線を合わせる千瀬が距離を縮めるから、ぱちぱちとまばたきすれば。
吐息が触れ合って、今度はきつく目を閉じる。
「……俺は抱きつかれるだけじゃ、足りないけど」
ゆっくり触れる気配と、触れた感触。
キスされてからその言葉を理解して、笑顔で「だいすき」と言うわたし。抱きついたらそのまま器用に抱っこして、ソファに座らせてくれるからやっぱり優しい。
「もうすぐ痺れもなおるでしょ。
……なおったら、あいつら席とってくれてるから飯行こ」
ね?と耳元で甘い吐息。
そんなところで甘くなくていいのに、甘やかされるのはやっぱりうれしくて。もう一度だいすきと言ってから、ぎゅっと抱きついた。