【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
07.忘却イノセント
【Side Mike】
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「やっと帰ったか。遅かったな」
「……案外お姫様が粘り強くてね」
18時を過ぎてようやく倉庫内に顔を出した俺を見て、万智は何か言いたげな顔をする。
けれど結局は言わないという結論に至ったのか、「証拠は?」と端的な事務連絡。
「揃ったよ。……ほら」
月霞の幹部が、お姫様を襲ってるように"見える"写真。
もちろんこれは、彼女が取引の末に同意のもとで撮らせてくれたものだ。当たり前だけど実際には何もしてないし、あくまで雰囲気だけの写真。
「確信的な写真はねえけど……まあいいか。
つうか、こんなに散らされたらあきらかにバレんじゃねえのか?」
散らされたら、と万智が言うのは彼女の肌を赤く染める独占欲の花の数。
ぶっちゃけ引くぐらいあるそれは、べつに於実がつけたものじゃない。もとから、それの数だけついてた。……冷静に見えて、結構七星って面白い男だよね。
「バレないようにするから、平気だって。
バレたらなんて言い訳するのか面白そうじゃない?」
「ふっ。潔く別れたらいいんじゃねえか?」
於実もこの花の数には引いてたしな。
ちなみにつけられた本人といえば、「あー……つけられたんだった」と思い出したようにつぶやいてたし、案外執着がないのは彼女の方なのかもしれない。
「でもあっさり別れたら面白くないんでしょ?」
「まぁな。……壊してからにする」
「ほんと、万智って性格悪いよね」
確実に褒めてはいないのだけれど、口角を上げるこの男。
性格の悪さは俺も同じかそれ以上か、と考えつつ、「写真の現像してくるよ」と幹部室を出て、自室へ向かった。