※雨のしずく※
〜プロローグ〜


吐く息は白く、ほんのり頬が赤く染まる。

歩道橋から見下ろすと忙しなく車が行き来している。


両手を口元に当てて、はぁっと息を吐くと、隣から伸びてきた大きな掌が私の両手を包み込んだ。

「寒い?」

優しく問いかける彼に、少しだけ、とだけ言ってまた視線を下に戻した。

5分ほどの沈黙。
それを破ったのは彼の一言だった。

「今でもキミは、あいつを想う?」

怒っているわけでも、悲しんでいるわけでもない優しい声で問いかける彼に、私は反射的に彼の目を見た。

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