※雨のしずく※
なんとかコンビニにたどり着き、無事に傘とタオルを購入。
濡れた髪の毛を拭いていると、横目に不思議な光景が映る。
制服を着た一人の男の人が、傘もささずに雨空を見上げていた。
その瞳はとても悲しそうで、私は思わず息を飲む。
濡れた黒髪、綺麗に整った顔と悲しそうな瞳、頬を伝う雨の雫に目を奪われずにはいられなかった。
綺麗、だと思った。
だけど気になったのはあの悲しそうな、今にも泣き出しそうな瞳。
どうかこの雨が、彼の悲しみを全て流してしまって、そう願うばかりだった。
不意に彼と目が合った。
ドキッと心臓が鳴り響く。
彼は一瞬驚いた表情を見せると、少し微笑んで会釈した。
私もつられて会釈すると、私に歩み寄り、
雨、ひどいですね。と声をかけてきた。
その声はどこか懐かしく、安心する声だった。
「こ、これ、良かったら使ってください!私もう一つあるので」
未使用のタオルを差し出した。
少し困ったような顔を浮かべたが、フッと笑顔になってタオルを受け取り、ありがとう、とだけ言い残して去って行った。
これが私と彼の初めての出会い。
あの日の彼の姿が今でも鮮明に焼き付いて離れない。