ダイヤモンドウエディング~キスからはじまる永遠の愛~《完》
拓真さんは部屋に入ると黙って提げていたコンビニの袋をテーブルに置いた。


「俺が居ないコトをいいコトに・・・柚希の部屋に行くなんて・・・軽率だぞ。小陽」


「柚希君は私にとって幼なじみですし」

「それは分かってる。でも、彩名が亡くなって…その幼なじみの関係は途切れてしまったんだろ?」

「・・・」

「・・・お前を奪わなきゃ・・・柚希は防衛医科大学病院を退職させられるらしい。
アイツは相馬家の次期後継者。防衛隊の医官として生きるコトに相馬様が猛反対しているらしいんだ」


「誰から訊いたんですか?」


「椎名さんからだ・・・。帰って来たと言うのに…肝心な小陽が居ないから・・・リビングに居た椎名さんに訊けば、柚希の部屋に行ったと言うから・・・こんな茶番に柚希がどうして付き合うのかと思えば、そんな事情あったんだ。
柚希はいいヤツだと思う。入退院を繰り返していた彩名にとって柚希は大きな心の支えだった。でも、俺はお前を柚希には譲れない」



「拓真…さん?」


「お前の好きなベリーソース付きチーズケーキもある。適当に食べてくれ。今日はすまない。
結婚して初めての誕生日だってんのに、知らなくて・・・」


拓真さんは私をカウチソファに座らせると何も言わず顔を近づけ、甘いキスを落とした。


「俺・・・柚希と話をして来る」

「拓真…さん?」


「お前はここに居ろっ」


「でも・・・」


「お前…柚希の子を産むつもりか?」


「それは出来ません・・・」


「だったら、ここに居ろ」

拓真さんは部屋を出て、柚希君の部屋に行ってしまった。



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