ダイヤモンドウエディング~キスからはじまる永遠の愛~《完》
「顔上げて下さい」

「小陽さん・・・」

柾貴君は頭を上げてズレた眼鏡のブリッジを指で押し上げる。
腑に落ちない表情を浮かべていた。


「お腹空きましたね…柾貴君、今夜は拓真さんの奢りですから・・・食べたいモノを言って下さい」

「拓真さんの奢り?」

「昨日のお礼をするように拓真さんからクレカを渡されました」

「昨日の礼なんて要りませんよ」

「それでは困ります。私も柾貴君にはお礼がしたいと思っています」

「では『ダイヤモンドホテル東京・ベイ』の『ル・パラディ』のディナーが食べたいです」

「その店って・・・」

拓真さんが私にプロポーズした想い出の場所。


ミシュランガイドでは三つ星レストランで有名。

予約なしで入れるだろうか?

私が黙ったジッと考えると柾貴君が笑って話し掛けて来た。


「冗談ですよ。ミシュランガイドの三つ星レストランだし、今日はプレミアムフライデー。ガチでは無理でしょう」


「柾貴君…貴方の期待に添えなくてゴメンなさい」

「冗談だって言ってるでしょ?小陽さん。
小陽さんの食べたい物を言って下さい。小陽さんに合わせます」

「柾貴君の食べたい物を言って下さい」

私は慌てて切り返す。

「俺の食べたい物は・・・」
柾貴君は勿体ぶったように語尾を濁す。

「俺が一度入ってみたかった店でいいですか?」

「いいですよ」

「じゃタクシーで向かいましょう」



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