ダイヤモンドウエディング~キスからはじまる永遠の愛~《完》
翌日は仕事に行き、上司に退職届を提出した。

筋は通し、見た目は円満退職を果たす。

俺と美桜は彼女の家族に会いに北海道の美瑛に訪れた。
富良野と並び、ラベンター畑で有名な場所だった。
美桜の実家は競走馬を生産していた中堅の牧場だったが、長引く不況の中で馬主が事業の撤退。それに伴った経営の悪化と父の死と共に多額の借金を残して牧場は潰れてしまった。

後継者である兄は元々継ぐ気はなく、ギャンブルに興じて自身も借金を持っていた。父の借金返済の名目で美桜が送金していた現金は自身の借金とギャンブルの軍資金に充てていた。母親もそれを黙認していた。



事実を知った美桜は自分から絶縁を言い出した。

俺も美桜も家族を失ったコトになる。


北海道観光もせずに東京に戻った。


「実はお話していませんでしたが、母と兄は全くの赤の他人なんです。母は兄の連れ子で私は父の前妻の子で・・・血の繫がりはないんです」

美桜があっさりと絶縁したのはそんな複雑な事情があったからだった。

「そうか・・・」

「あのまま二人と家族を続けても、壱真さんに迷惑かかると思ったし」

「でも、亡くなった父の借金はどうする?実の子は君だけだから、返済する義務が発生するかもしれない」

「それは・・・」


「二人と完全に縁を切るなら、借金は全額返済しよう」

「でも・・・そんなお金は何処にも・・・」

「俺が肩代わりする」

「壱真さん・・・」

「株とかで儲けて金はあるんだよ。心配しないで。美桜」







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