ダイヤモンドウエディング~キスからはじまる永遠の愛~《完》
「しずかに」

お義父さんは俺の口許に小さな薬指を当てる。


「父上のおはなしはつまんないからぬけてきたんだ。おじさん、ぼくをかがくかんに連れてって」

「そう言われても・・・」

「いいから、はやく!!」

俺は突然現れたお義父さんに腕を引っ張られる。

天体観測が趣味だとは知っていたが、幼稚園時代から星に興味を持っていたんだな。

**********


俺とお義父さんは近くの東京科学館でプラネタリウムを観賞する。


投影時間までの僅かな時間。わくわくしたような表情を浮かべて一生懸命パンフレットを覗き見る彼に問いかけた。


「敦司君もお父さんのように政治家になるんでしょ?」

「ううん。僕は大きなったら、お星さまをけんきゅうする人になって、毎日、星をみてくらすんだ」

最初から政治家を志していたワケではないらしい。4歳の子供だから、好きなコトを仕事にしたいと思うのは当たり前の考え方だろう。

今は普通の子供でも、将来は祖父と父の後を継ぎ総理の椅子に座る人。
彼は成長と共に自分の立場を理解していく。
お義父さんは俺にとって孤高の存在で、一生頭は上がらないだろう。
隣に座る敦司君はダイヤの原石だ。
< 315 / 371 >

この作品をシェア

pagetop