幼なじみの恋煩い
「ん……、野菜炒め、味付け丁度良いじゃん」

ほうれん草の炒め物を口に運び、
「うめぇ……」と呟く雪斗に私はほっと胸を撫で下ろす。

良かった……。美味しく出来たみたい……。

毎日、早起きして作るお弁当。
ほんの少しの苦労で、雪斗に喜んでもらえたのが嬉しかった。

「澄澪さん程上手く作れねぇって言ってたけど、
まぁ……、同じくらい上手いんじゃねぇの。ごちそうさま」

少し照れたように顔を背けながら弁当箱を地面に置く雪斗。
その様子に私の口は緩む。

さっき様子がおかしかったのも……
多分気のせい……だよね。
そう思い込むようにした。

「さて、俺は教室行く。美味しかったぜ」

「……う、うん」

ぼーっとしていると急に雪斗が立ち上がった。
それに吃驚しながら私返事をした。
そのまま、屋上から出ていくのかと思いきや雪斗は、扉の前で立ち止まる。

「それと……、お前さ、好きな人いるんじゃねぇの?……例えば……沙々倉先輩……とか」

「え……」

急な言葉に間の抜けた声を出す。
私の様子に、雪斗はどこか寂しそうな笑みを浮かべながら言った。

「……まぁ、いいんだけどな。
応援はしねぇけどせいぜい頑張れ、とだけ言っとくよ。じゃあな」

扉を開けてその場から去っていく雪斗に
私には疑問が募っていくばかりだった。
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