どうでも良くて大切なもの
帰りの電車は、この時間、どうしても混んでいる。
座っているサラリーマンの前に立って、しばらくしたら足をみて、聞こえるか聞こえないくらいの小声で

「痛てて…」

と呟く。
すると、大体の男は『どうぞ』と席を譲る。
そして、いいことをした自分に満足している。

「本当に…?ありがとうございます。助かりました」

と微笑むと、嘘だと知らないバカな男は
『いえ』とすましている。
足を揃えて座って、揺られながらぼーっとする。
目を瞑り、目を開けたらこの世界が滅んでくれないかと願う。

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