明日、僕と結婚しよう。
ガコン、と音を立ててお茶のペットボトルが落ちてくる。
続けて100パーセントのオレンジジュースがペットボトルの上に重なる。
ゆっくりとしゃがみこみ、そのふたつを自販機から取り出した。
「はい」
「ありがとう」
そばにいたちひろにジュースの缶を渡し、僕はゆるりと口角を上げた。
冷たい飲み物にわずかな時間でも触れていた指先が、ひんやりとする。
立ち上がり、彼女の隣でペットボトルの蓋を開ける。
家で作るお茶とは違う味に舌が敏感に反応するけど、そのまま無視して喉の奥に流しこんだ。
はぁ、と息を吐く。
しばしの休憩に肩の力を抜いた。
「さっきの子たち、可愛かったね」
「絵本コーナーの?」
「うん。あの男の子と女の子」
「確かに可愛かった。ちっちゃかったなぁ」
ちひろが話題にあげたのは、幼稚園か小学校低学年か、それくらいの年齢のふたりのこと。
まだ幼いもっちりとした頰をしていた。
市役所を出た僕たちはここまで来たんだからせっかくと図書館に寄った。
他にも猫のあとを追ってみたり、家の前のアスファルトにチョークで書かれた落書きを見て笑ったり、そこらをうろついた。
だけど1番印象深かったのはやっぱり、図書館の児童向けの絵本コーナーで見かけた子どもたちのことなんだ。