明日、僕と結婚しよう。




ちひろの父親がただただちひろを甘やかし愛していた、幼い頃。

記憶は薄れた、だけどなにも残っていないわけではない。

そんな思い出の時、僕はまだ元気でいつだってちひろと笑いあっていた。

きっとあの頃が1番幸せだった。



だけど成長とともに、自分も周りの環境も、多くのことが変化して。

昔できたことができなくなった。

毎日を過ごすことは当然のことではなくなった。



ちひろは肌を隠し、僕は僕の身体の限界を見極めながら。

いつだって怯えていた。



そしてとうとう、パスポートなんて数年で許可が取り消されるようなものがなければ向かうことも許されない。

そういうところに、僕は行く。



治療を、手術を受けて、少しでも可能性をつかみに行く。

そう、両親と約束したから。



「正人のためには行った方がいいってわかっているよ。だけど、場所も病気も、くわしいことはなにも教えてくれない。そんな君をどうやって信じたらいいの?」



ちひろがそんなふうに思ってしまうのも、仕方がない。

むしろ当然だ。

なにも言わないくせに信じて欲しい、なんて身勝手にもほどがある。



人の心は複雑で、かんたんじゃない。

なのに僕は好き勝手言うだけで、できるはずないね。






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