下宿屋 東風荘
翌朝は早目に朝餉の支度をし、平皿に卵焼きや焼き鮭を並べ、蓋付きの鉢に胡瓜や那須等の糠漬けを机に並べて置く。
御飯などもいつも通りに用意し、昨日見た子供の向かう学校へと姿を消して門で待つ。

「今年は中々にいい感じの子が多いねぇ」と門を入っていく受験生達に憑いたモノを少しばかり気晴しに祓う。

悪いモノは祓うが、害のないものまで祓っていると切りが無い。
幾つか祓い待っている中で、たまに勘のいい者がこちらを見るが、完全に見えていることはまずない。
見えていたならば着物を着た、耳としっぽを生やした人間が立っていると驚くだろうし、その時は『見た』記憶を消させてもらう。

昨日の子供が、きょろきょろと周りを気にし、下を向いて自身なさげに歩いてくる。

「何と気の弱い……折角の守りもあんなに憑けては意味があるまい。やはり、呼ぶ体質かもしれぬな……」

ため息を一つつき、憑いているものを祓う。背中いっぱいに乗せたモノを数度に分けて祓うが、昨日見た時にはいなかったので、1日でどれだけ憑けるんだと今後が不安になる。
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