好きだなんて言ってあげない


「待たせちゃいました?」

「いや、さっき来たとこ」

促されてエレベーターへ歩いて行く。専務の左手にはカードキー。

クリームイエローのブラウスにオフホワイトのアンクルパンツ。茶に近いベージュのヒールのないパンプス。エレベーターの鏡で自分の姿を確認する。

シンプルだけど普通のOLの通勤スタイル。おかしいところはないはず。

「亜弥」

少しわたしの方に身を屈めた専務が唇を軽く重ねた。

エレベーターに2人きりで良かった。

「・・・・・アンタはアメリカ人か」

「生粋の日本人」

しれっと答える専務が唇の端を悪戯っぽく少し上げる。

部屋に行くとダブルベッドが存在感を放つ。だよね、ヤルのが目的だもんね。ラブホとかじゃないだけマシか。

「メシ、ルームサービスで頼むから」

「うん、軽いもので。アルコールも少し欲しい」

専務がメニュー片手に電話をかけ始めたのを機に、先にシャワー借りると断ってからバスルームに籠る。

広いバスタブ、アメニティも高級でさすが一流ホテルだ。
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