好きだなんて言ってあげない
「・・・・・野波さん、こまりに会うつもり?」
「何か考えてるみたいやな。あそこまで頑なに小娘が何も言わへんのは小娘なりの決意があるんやろって、絶対に逃がしはせんけど事情が分かるまではこのままやって朔が言うてた」
「・・・・・絶対に逃がさんって凄い」
「オレもあんなに女に執着する朔は初めてやな。モテる分、適当に遊んだりもしてたけど誰に対してもソツなく深くは関わらへんかった」
「それだけこまりを愛してるんでしょ」
「そうやろな、小娘は裏表がなくて阿呆みたいに愚直で一生懸命朔の愛情に応えようとするからな。可愛くてたまらんのやろ」
そこにあるのは羨望?
ねぇ、何を感じてるの?
また鈍い痛みがぶり返す。
専務の手からグラスを取り、自分の分とテーブルに置き、ベッドに座る専務の膝に足を開いて向かい合わせに座った。
「やろ」
専務が目を瞠る。
埋めてあげる、身体だけ。
叶わない、伝えられない想いを、身体だけ満たしてあげる。
わたしに溺れて、報われない恋心を少しだけでも癒したらいい。
それが好きでもない女を抱くはめになったこの間のお詫びになるのならーーーー。