好きだなんて言ってあげない
居酒屋に駆け込むと店員に個室へと案内された。襖を開けると中にいる人たちの目が一斉に向けられる。
山岸と専務と・・・・・女の子?
確か山岸と同じ新入行員の佐野さん・・・・・だったかな?
「・・・・・遅れてごめんなさい」
靴を脱ぎ、部屋に入ると襖を後ろ手に閉めた。
「お疲れさまです、杉浦さん」
美人ではないけれど、細めた目が可愛い。
「亜弥、ビールでええか?」
「あ、うん。アルコールさえ入ってれば何でも」
佐野さんがクスリともらした。
「杉浦さん、わたしたち同期の間で『男らしい』って人気あるんですよ」
「ははっ、そらどうも。で?佐野さん、山岸のカノジョ?」
「「違います!」」
2人揃って否定するわりにはどちらも耳まで真っ赤だ。
山岸が気持ちを立て直すようにコホンと軽い咳払いをし、佐野さんに目配せする。
「違いますよ、木下さんが野波さんと別れた理由がわかりました」
「は・・・・・?」
専務と目を合わせる。