好きだなんて言ってあげない
銀行の規約に『取引先の重役と寝ない』ってあったっけ?
「ある訳ないやろ。アホか、お前」
隣から心底呆れたような声。
なんだ、起きてたのかと顔を向ける。
「何・・・・・?専務エスパー!?」
「重ね重ねアホやな、色々漏れてんだよ」
隣の男、折田結弦。
わたしの勤めるあおば銀行の大口取引先、折田繊維の創業者一族で専務。
どうしよう・・・・・?
暴行罪で訴えられたら。
「シャワー借りるぞ」
「あ、はい、どうぞ」
起き抜けだというのにシャキッとしてるわ。
一糸まとわぬ姿で堂々とベッドから下りて脱ぎ散らかした服の中からワイシャツと下着を探り出した。
お尻はキュッと上がり、程よく筋肉もついていい身体だなと目が離せない。
「・・・・・着替えないし仕方ないか」
と軽く舌打ち。
「・・・・・隣のコンビニで買ってくるよ?」
「ガン見だな、お前。イヤンって普通目を逸らさへんか?」
どっこも隠さへんあんたもあんただろうが。
上掛けを身体に巻いて起き上がり、クローゼットをあけて新しい下着のセットと部屋着にしているTシャツとハーフパンツを出す。