好きだなんて言ってあげない
「そうや!バカみたいに朔のことしか考えてへん!お前が怒るのも当たり前や!」
「それやったら行かせてよ!止めないでよ!!」
「そんな卑怯なヤツにお前が手を汚す必要なんかない!!」
鋭く言い切られ、専務の厳しい瞳に見据えられた。山岸も佐野さんもわたしと専務の言い合いに驚いているのか一言も発さない。
力が抜けて、その場に座り込むと横からビールの入ったコップが渡されて一気に飲み干す。
「ごめん・・・・・つい興奮して・・・・・」
「杉浦さんの気持ち、わかりますよ。オレだって佐野から聞いたときには頭に血がのぼりましたから」
恐らくあの嫌がらせの数々も矢口の仕業なんだろう。考えれば考えるほど頭の中が煮え滾る。
「なんか仕返ししないと気が収まらへん」
「・・・・・お前らは何もするな」
「は?」
「腐っても同じ会社の重役の娘やろ、仕事に差し障りがあったら不味い」
「けどーーーー!」
「オレがしてやる」
「・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
「オレがキッチリ仕返してやる」
そう言って専務が口元を緩めた。
イケメンは黒い笑顔を浮かべてもイケメンだったーーーーー。