好きだなんて言ってあげない
「違うけど?」
「えぇっ!?違うんですか?」
「なんで山岸まで・・・・・」
「あの気の合いっぷり、あんだけズケズケ言い合うのに付き合ってない?」
「しつこいな。付き合ってません」
厳密には身体だけの付き合いはあるけど。山岸と佐野さんが珍しいものでも見るような目を向けてきた。お箸を揃えてごちそうさまと手を合わせて立ち上がる。信じられないという表情をした2人を置いてけぼりにして食堂を出た。
化粧直しのためにトイレに寄ろうと廊下の角を曲がると、誰かにぶつかりそうになり、すんでのところで足を止めた。
「すいませーーー」
「気をつけなさいよ、危ないわね」
コチラが謝っているのに上からの物言い。今、一番会いたくなくて、相手をしたくないヤツ。取り巻きの女子を3人ほど連れている。
化粧直しを終えたのだろう。
口紅もツヤツヤ、ファンデーションもバッチリ。睫毛もクルンと綺麗な弧を描いて天をむいている。
ああ、もう今口を開いたら余計なことまで言ってしまいそうだ。