好きだなんて言ってあげない


キッチンでコーヒーメーカーをセットし、スイッチを入れたところでタオルで頭を拭きながらTシャツにトランクス姿の専務がバスルームから出てきた。

「お先に」

「はい。わたしもさっと浴びてくるしコーヒーが入ったら適当にテーブルの上のもの食べてて」


専務がふきだす。


「お前、清々しいほど飾らへんな。こういうときって女子って手作りの朝ごはんとか用意するんちゃう?」

「専務に今更飾ったってしょうがないでしょ」

クックッと笑う専務を残してバスルームに急いだ。

シャワーのコックを全開にして目を覚ますように少し熱めのお湯を頭からかぶる。

失敗した・・・・・。
大失敗だ。


昨夜、専務の前で泣いたのがダメだった。


一昨日の朝、出社してすぐに森崎係長から聞いた同期の友人、こまりのお母さんの訃報。かなり混乱して動揺してるみたいだから行ってあげた方がいいかも、と言われ迷わず2日間の有休をとった。

ちょうど木曜日だし週末までこまりに付き合ってやれる。
< 4 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop