好きだなんて言ってあげない
そもそもお母さんはなんで亡くなったんだろう?具合が悪いなんて話聞いてない。
「末期癌でホスピスにいたんやと、春くらいから。偶然ウチのジジィの知り合いが院長してる病院だった」
春・・・・・?
どんどんこまりが痩せていく筈だ。
「あの子・・・・・何にも言わへんから!」
膝の上に置いたバッグに拳を叩きつける。
「取り敢えずオレらが行くまで小娘を病院に止めといてもらってる。葬儀屋の手配とかアイツ無理やろ」
確かに。
野波さんと別れたことも多分こまりはわたしに本当のことを話していない。あの一途で優しい子がたかだか遠距離くらいで、初めて身体を任せた男を諦める筈ない。
相手がこまりを諦めていないのに。
分かっていたのに騙されたふりをして黙って見てた。いつか話してくれるだろうと。
こんなにこまりに厳しい状況だったのにーーーー!
信号待ちで止まると不意に右頬をスルリと撫でられた。
「アイツが誰にも何にも話さず苦しい状況を独りで耐えることにしたんや。お前が自分を責める必要はないからな」