好きだなんて言ってあげない
痩せて儚げになってしまって、それでも喪主として挨拶をし、全てをこなしていくこまり。
胸が潰れそうだ。
何もかもが終わり、こまりの家でわたしの限界がきた。何にも言ってくれなかったこまりを詰り、責める。
こまりを抱き締めて泣く。
どれだけの哀しみを呑み込んで、
どれだけの苦しみをその小さな身体に閉じ込めてきたの。
ごめん、役に立てなくてーーー。
ごめん、何にも聞いてあげられなくてーーー。
こまりの家を出て、専務の車に乗っても涙が止まらない。ずっとしゃくりあげるわたしに専務は何も言わない。
気付けば自分のマンションの部屋まで専務に送られていた。
わたしから鍵を受け取ってドアを専務が開ける。
「週末、ちょっとゆっくりしろ。2日間お疲れさん」
そう言ってわたしの荷物を置いて出て行こうとする。
嫌だ。
独りにしないで。
専務の上着の裾を掴んだ。
「亜弥?」
首を横に振りながら胸に縋り付く。
何の香りだろう、専務の胸に顔を埋めて何故か香りと体温にホッとした。
165cmのわたしが見上げるほどの長身。どこか心配そうにわたしを見下ろす瞳。
何か考えていた訳じゃない。
何か考えて行動した訳じゃない。
襟元を引っ張って爪先立ちになり唇を重ねた。