恋になる、その前に
それがつい、樹希の目に余るグルグル思考に呆れて、兄貴の長期出張を転勤だと大げさに煽ってしまった。
いつまでも同じままでいられるとは思うな、と。
慌てた樹希は決死の覚悟で告白し、ふたりはやっと上手い具合にまとまった。
だから、そこから先は自己責任でご自由に、ってはずなのに、何で不具合が起こるたびに、この俺が間に入らなきゃなんないのか。
うっかり手を貸したあのときは、俺自身、魔が差したとしか思えない。
……面倒くせえ。
それでも樹希からラインが入ればシカトすることも出来ず、結局は面倒をみることになるなんて、なんつー悪循環だ。
「でも、それって『愛』だよね」
「……なんすか。そりゃあ」
「だってお兄さんと喧嘩した幼なじみさんのためにうちの課と合同の飲み会を欠席したって話でしょ?」
「そーゆー話じゃなくて。兄貴は何でも口にするタイプじゃないから、アイツは周期的に不安になるらしいんで相談? いや、そんなたいそうなもんじゃないな。とにかくパーッと飲んで、これがバカみたいにグデングデンになるんですよ」
「……だからそういうの、ちまたでは『愛』と呼ぶんですよ。高遠颯哉(たかとう そうや)さん、おわかり?」
さっきまでいい声をきかせてくれたひとは、シーツで隠れた自分の胸に手を押し当てた。
茶化すように俺を解析したこのひと、三峰紗綾(みつみね さあや)は、部署は違うが会社の先輩だ。
いつまでも同じままでいられるとは思うな、と。
慌てた樹希は決死の覚悟で告白し、ふたりはやっと上手い具合にまとまった。
だから、そこから先は自己責任でご自由に、ってはずなのに、何で不具合が起こるたびに、この俺が間に入らなきゃなんないのか。
うっかり手を貸したあのときは、俺自身、魔が差したとしか思えない。
……面倒くせえ。
それでも樹希からラインが入ればシカトすることも出来ず、結局は面倒をみることになるなんて、なんつー悪循環だ。
「でも、それって『愛』だよね」
「……なんすか。そりゃあ」
「だってお兄さんと喧嘩した幼なじみさんのためにうちの課と合同の飲み会を欠席したって話でしょ?」
「そーゆー話じゃなくて。兄貴は何でも口にするタイプじゃないから、アイツは周期的に不安になるらしいんで相談? いや、そんなたいそうなもんじゃないな。とにかくパーッと飲んで、これがバカみたいにグデングデンになるんですよ」
「……だからそういうの、ちまたでは『愛』と呼ぶんですよ。高遠颯哉(たかとう そうや)さん、おわかり?」
さっきまでいい声をきかせてくれたひとは、シーツで隠れた自分の胸に手を押し当てた。
茶化すように俺を解析したこのひと、三峰紗綾(みつみね さあや)は、部署は違うが会社の先輩だ。