素直の向こうがわ【after story】



この一年、ずっと河野が合格出来ることだけを祈って過ごして来た。


夜になると、ふと怖くなったりした。


――もし、また不合格になったら。


そんな想像をしてしまう自分が嫌で、そんな弱い自分が嫌でいつも無理やりに明るくしていた。

でも、河野の傍にいるうちに、河野は絶対に合格出来るって思えるようになった。
それは全部、河野のおかげ。

どんなに辛くなっても河野と一緒に歩いて行きたいなんて思ってた。
励ましたいって。
でも、励まされていたのは私の方だった。

いつだって私を安心させるために、河野は頑張ってた。
いろんなことを我慢して努力している姿を見ていたら、祈りが確信に変わっていた。

確信していたつもりではあったけど、本当に合格したと実感したら、ぶわっと感情が溢れ出して自分でも収集が付かなくなった。

それで思い知ったのだ。
自分が、どれだけ気を張り詰めていたのかを。

身体中から緊張が解けたような、あまりの安心感から力が抜けて行くようなそんな不思議な感情に覆われた。


心の底から嬉しかった。

だから、ありったけの想いを込めてお祝いをしたかった。
河野のためにお祝いを出来る日を待ち望んでいたから。

一年間待ち望んでいた日が、今日なのだ。

眠れないのも仕方ないと自分を納得させる。

興奮のあまり眠れなくても当然だ。


それと――。

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