素直の向こうがわ【after story】
「え? 眼鏡?」
「特に、女の子の前では……」
だって、眼鏡を取った河野は、眼鏡を掛けている時とは違って、何と言うか、ものすごく、ものすごく……色気がある。
実は、前からちょっと思っていたのだけど。
――そう。多分、眼鏡を取った河野は、全面真面目顔から全面男前に変わる。
この目は、やばいと思う。
このギャップは、ちょっと、いやかなり危険だと思う。
「まあ、そう滅多に眼鏡は取らないけど……」
「とにかく。お願いね。絶対だめ」
「変な奴」
そう言いながら、私の鼻先に口付けて来る。
もう現実世界に戻れないのでは――。
そんなことを思ってしまう。
こんなに甘くて甘くて甘い河野を知ってしまって、これが実は夢だってことになったとして、それでまたあの無表情に戻られたら、耐えられない気がする。
夢なら覚めないで。
そう思って、河野に抱き付いてしまった。
優しく私の髪を梳くように触れて、優しく抱きしめ返してくれる。
河野の肌の温もりに、身も心も蕩けてしまいそうだった。