素直の向こうがわ【after story】
なんとか、ぎりぎり滑り込んだ医学部での生活も早二か月。
ただただ医師になりたい一心で、そんなに要領もよくない私が必死の努力で手にした合格だった。
東京都内にある国立大学。
全国にある国立の医学部の中でもかなり偏差値は高い方で。
完全に努力型の私は、中高と私立一貫校に通い、「一に勉強、二に勉強」の超スパルタ進学校で勉強に明け暮れる毎日だった。
だから、医学部での生活は、夢にまで見たものなのだけれど――。
想像はしていた。
入学した後のほうがよっぽど大変なんだって話には聞いていた。
でも、でも。
そんな予想をはるかに上回るハードさだった。
それなのに、先輩たちから漏れ伝わる声に、唖然とする。
「医学部は一年のうちに遊んどけよ。一年のうちが一番時間に余裕があるんだ」
えーっ!
これで、余裕があることになってるの?
もう既にあっぷあっぷです。
毎日詰め込まれた講義と実験の繰り返し。
高校の授業の延長みたいな内容ではあるのだけど、とにかく量が多くて。
鬼のように出される課題やレポートに四苦八苦していた。
実験のたびに失敗したり、人より終わるのが遅くなってしまったり。
要領の悪さに、ほとほとへこむ。
そんな毎日に早くも疲れ果てていた。
でも、そんな私にも、
ほんの少しだけ楽しみがある――。