素直の向こうがわ【after story】



「おまえ、バカ? むしろ共学の子より女子大の子の方が狙われてるって事実知らないの?」


卒業してから久しぶりに、高校時代同じ生徒会だった田中に会った。
その田中によって知らされた事実に驚愕する。


「俺の大学なんてさ、松本さんの女子大に大挙してサークルの勧誘とかに行ってるよ。女子大の子も出会いが欲しいから他大学と共同のサークルに入る子も多いんだ。その中でも一年生の女子なんて一番の餌食だぞ」


そんなこと、俺が知るわけない。
そんな話、おまえの周りだけなんじゃないのか。

必死にそう思おうとしている自分がいる。

田中は都内の有名私大の法学部に入学していた。
そう言うこいつから出て来る話題は、サークルやら遊びやらそんな話題ばかりだ。


「なんか、女子大の子って、それだけでぐっとくるっていうか、そう言う感じなんだよな」

「おい」


俺はつい田中をじろりと睨みつけた。


「なんだよ。そんな怖い顔するなよ。別に俺が松本さんに何かしてるわけじゃないんだから。でも……」


田中は何かを思い返しているような表情をしてから俺を見た。


「松本さん美人だから目に付くし、結構誘われたりすると思うよ。ほんと、男の大学生なんてそんなことしか考えてないから。俺の今の経験からの忠告。まあ、おまえも真面目ばかりが能じゃないぞ」


そう言って無責任に俺の肩を叩いた。
今の俺には酷過ぎる情報に、頭が痛くなる。

こんな情報手に入れたからって俺にどうできる?

横でヘラヘラしている田中を恨めしく思いながら睨みつける。

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