素直の向こうがわ【after story】


駅ビルの最上階にあるレストランフロア。

その中でも、ファミリー向けと思われるレストランに入った。

そこでも、そそくさと文子の隣に座る渉。

俺は二人の向かいに腰を下ろした。


「渉君は、学校楽しい?」

「まあまあだな」

「やっぱり、徹の弟だけあって勉強好きなの?」

「まあ、好きでもないけど、やれば出来るって感じかな」

「すごーい。じゃあ女の子にもモテちゃうんじゃない?」

「そんなのオレ、キョーミないし」

「なに、その発言。超男前発言だね!」


何が興味ないだ。
目の前の人にしか興味がないだけの話だろ。

渉の受け答えに、そのたびに本当に嬉しそうに見つめる文子の顔。
そして、それがまた本当に嬉しいのか得意顔で話す渉。

そして、そんな二人を正面にしている俺。

なんだ、この席の配置は。


――でも、結局。
なんだかんだ言っても、文子が笑っているのが一番嬉しい。

兄弟のいない文子にとって、渉が弟みたいで可愛いっていう気持ちはよく分かる。
こうやって面倒をみることが嬉しいってことも。

そんな文子の姿を見ていれば、どうしてもこちらの顔も綻んでくるというもの。

結局笑顔の理由はなんだっていいのだ。

ただ君が笑えば、それが嬉しい。


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