素直の向こうがわ【after story】
「私のとこは、班とか、そういうのないから……」
「そっか」
「……」
なんだ。この沈黙は。
そんなにも暗い表情をさせるようなことを言ったかな。
「あの……」
「うん?」
「徹の班の女の子はあの川名さんっていう子だけ?」
「……え? あ、ああ。うん、そうだけど」
「やっぱりそれだけ長い時間一緒にいたら、仲良くなったりするよね。別に男だからとか女だからとかじゃなくて、普通に友達みたいに親しくなるよね。それが共学ってことだもんね。うん。そうだ。そう」
沈黙から一転、今度は一気にそうまくしたてた。
そして言い終えて、しょぼんと小さくなっている。
なんだ、一体。
思い返してみれば、あの、大学に突然来た日から電話での会話がどこかよそよそしかった。
何かを気にしてるのか。
何を――?
「まあ、他の人に比べたら親しくもなるけど。それがどうかしたのか?」
俺の答えが、文子の何かに触れたらしい。
急に顔を赤くして怒り出した。
「だから、どうもしないってば!」
そうかと思ったら、次は目の前の料理を勢い込んで食べ始めている。
今度は喉に詰まらせたのか咳込んだ。
「おい、大丈夫か? そんなに慌てて食べるから」
文子に水の入ったグラスを渡してやる。
それを素直に受け取った文子は一口飲んで、胸をトントンと叩いていた。
「……、ほんっとに徹って鈍感」
聞き捨てならない言葉が耳に届いた。
「え?」
「頭はいいくせに、そういうとこ全然察してくれない。全然女の子の気持ちとか分かってない」
今度は何の話になったんだ?
そして、どうして俺は怒られてる?