素直の向こうがわ【after story】



本当に最近の松本は俺には眩しすぎて。

窮屈な殻を破った自然体の綺麗さが内面から出ているようで、その大人っぽい雰囲気に一緒にいるだけで心を奪われる。

伏せた目も、俺に微笑みかけるくしゃっとした笑顔も、その全てが俺の不安へと変わって行った。

それもこれも、余計な情報を吹き込んで来た田中のせいだ。


滅多にない、勉強以外の松本の大学での話題に敏感になってしまった。
松本から届いたメールに、固まる。


(今日、どうしても友達に誘われて飲み会の場に行かなくちゃいけなくて。夜電話に出られないかもしれない。ごめんね)


初めて出て来た『飲み会』というキーワード。
これは田中の言っていたコンパというものだろうか。

頭では分かっている。
大学にでも入ればいろんな付き合いがあるって。
松本にも大事にしなくちゃいけない友人もいるだろう。
無下に断れない誘いもあるだろう。

そこに男がいるかどうかも分からないのに、勝手に不安になる。


(俺もその日ちょうど予備校の授業が9時くらいまであるんだ。もし時間が合うなら迎えに行く。夜、危ないし)


勢いのままに返信てしまった、こんなメール。


俺、どれだけ心配になってんだ?


送ってしまってから後悔に苛まれた。


こんなメール読んで、松本に鬱陶しいと思われたらどうするんだよ……。


送信の取り消しをしたいなんて無駄な抵抗を試みるも、すぐに俺の携帯電話は鳴り出した。




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