素直の向こうがわ【after story】
耳の輪郭をなぞるように唇を這わせると、呻くように文が声を漏らす。
「徹……」
うなされるような声と共にしがみついてくる小さな手。
それが余計に俺を煽り、耳たぶを口に含む。
「……や」
目を硬く閉じて、身を捩る。
「やめてほしいの……?」
耳の傍でわざと囁くように言う。
それに反応した文子は俺にすがるように見つめて頷く。
「……だめ。渉にばかり笑顔を見せたことと、俺のこと信用してなかったことの罰」
そのまま唇を首筋に這わせた。
その途端にさらに甘い息を漏らした。
床に広がる髪が、ゆらゆらと揺れる。
俺にしがみつくように回された腕が、何かを訴えて来る。
文子の潤んだ唇を再び塞ぐ。
何度キスしても、もっともっとと欲望が湧き上る。
空いていた手で滑るように身体をなぞると、その華奢な身体をのけぞらせた。
こんなことをしている自分が自分でもどこか信じられない。
あんなにも抱くことを躊躇っていたのに、一度手にしてしまうとこうも変わるのか。
それは奥底で考えていた不安が当たったということにもなる。
初めて知った愛する人と肌を重ねることの幸せに、溺れてしまいそうになる。