素直の向こうがわ【after story】
~文子side~
季節は廻り、長い夏休みも終わって大学も始まった。
私の通う女子大は、山手線沿線にある、まあまあ有名な大学で。
世間の評判ではいちおう、お嬢様大学ってことになってる。
でも、実際入学してみたら、確かに「いかにも」っていう感じの子もいるけど、ほとんどはごく普通の女の子たちばかりだ。
だがしかし。
共学の大学に通う薫やまりなの話を聞いてみると、女子大の方が華やかな学生生活なのだそうだ。
そう言われて周囲を見渡してみると、同じ学科の友人たちもそれぞれだ。
勉強一筋って子もいる。
男の子との出会いに命を燃やしているような子もいる。
おそらくこのグループが、女子大ならではの華やかな生活をしている人たちだろう。
他大のサークルに所属し、着々と彼氏を作っている。
そして、私のようないたって普通の人間。
サークルにも入ってはいるけど、私は他大のサークルではなく自分の大学のサークルに入っている。それも、『お料理研究会』なんて言う女子だけでわいわいとやるサークルだ。これが結構真面目なサークルで、本格的な懐石料理を一から作るなんてことをしたりする。
私なんてまだまだで、先輩たちにはいつも尊敬の眼差しだ。
それに、私の所属する栄養学科は、将来的には管理栄養士の資格を取ろうという人たちが多くて、皆基本的に勉強熱心だ。
そんな環境もあって、私が日常生活において男の子と接することはまずない。
そんな必要性もないから、この生活に満足してる。
女の子だけでワイワイするのは、けっこう好きなのだ。
高校の時だって、男と遊ぶのも一年で飽きて、結局薫や真里菜とつるんでいたのが楽しかったのだから。
私にとって何よりも大事な男の人は、徹だけだ。
他にはいらない。関わるのもどこか面倒だ。
余計なことに巻き込まれたくないし。