わたしのいちばんすきなひと。




電話には出ずに着信音だけが鳴り響く。


しばらくすると音は鳴り止んだ。




「ごめん、莉子、本当にごめん。」

翔くんは立ち上がりカーテンを開けて外を見る。


カーテンから見えた外は
雨が止んでいた…


気づかなかった、雨が止んでいたことに。
さっきまで聞こえていた雨の音は聞こえなくなっていた。



「雨止んだし、俺帰るな。
コーヒーありがとう。」


翔くんは荷物を持って慌ただしく帰って行った。


ガチャンと響く玄関が締まった音。

その音が虚しく聞こえた。





何も考えられずにその場に座り込んでいるわたし。


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