私魔法使いらしいので異世界救ってきます
「し、おん……」



「ごめん」



「離して……透さんが……」



「お前が怒り出した辺りからいなくなってたよ」



でも、だからと言って抱きしめていいとはならない。



「水龍呼んで書類びちょびちょにするよ?」



「それで愛凛の気が済むなら」



「……いつもみたいにふざけんな、って言ってよ」



「好きな女が泣いてんのにそんなこと言えるわけなくね?」



「え……」



頭の中が一瞬真っ白になった。


今、好きって言った……?



「俺だって好きで仕事をやってるんじゃない。でも、早く終わらせないと愛凛が魔王になった時、助けられないと思った。お前も1人で抱えるタイプだからな」



「っ自分を大事にしなきゃ、意味無いよっ……」



「それは反省してる。まさかこんなに心配されてるとは思ってなかった」



「好きな人の事だもん。心配するに決まってんじゃん……」



「は……」



私を抱きしめる腕が緩まったので、抜け出して紫苑の正面に立つ。



「私紫苑の事が好きみたい」



「な、んだよそれ……」



「好きってよく分からなかったんだけど、紫苑が意識を失う間際に好きって言ったじゃん?それを聞いてから意識し始めたの」



「じゃああれは無駄じゃなかったのか……てっきり忘れられてるかと思ってた」



なんだ。紫苑も同じ風に思ってたんだね。


安心して緩みきった紫苑の笑顔を見て私まで笑顔になる。


少しの間ニコニコして見つめ合ってたら急に真剣な顔になった。



「愛凛、俺と付き合



ピピピピピッ



……何の音」



ここで来るのかぁ……


アランに渡した折り紙の鶴が山積みになっている書類の上に乗っている。


こんな良いところで一体何が起きたんだか……

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