イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
安藤の売約宣言に、すこぶる食いつきの良さを見せるhacchi嬢。
「何なに、そんなの初耳~!? うっそ、どんな人なの」
教えてよ――などと、爛々と瞳を輝かせながら、ティーンエイジャー特有の弾けるテンションを発揮する。いつの世も、恋バナとは女子にとっての御馳走なのだ。
安藤はしたり顔でムカつく笑顔を披露しつつ、かと思えばこれまた「お口にチャック」と、はなす気はないらしい。
単に恋人がいると自慢したかっただけかと、hacchi嬢は暗に惚気られて悔しくなった。
そんな一連のやり取りを静観する碧羽たちは、ソファへと腰を下ろしたまま、身の置き所を決めかねている。
彼女の目まぐるしい登場に度肝を抜かれ、平素な心情が保てないのだ。そこへひとり沈思黙考していた凛が、ソファから立ち上がって安藤に再度詰問する。
「どういうことですか、安藤さん。どうして彼女がここへ? 僕たちに、いったい何の用があるんですか」
およそいつもの凛らしからぬ、つっけんどんな態度。
胡散臭い笑顔や態度はどこ行ったと、つっ込む余裕もないほど様子のおかしな兄の豹変ぶりに、然しもの漸も狼狽(ろうばい)する。