イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

「ん?……んんん? やだ、凛じゃない~~~ッ!」

 安藤に半眼を向けていたhacchi嬢は、はじめて向かいのベンチソファに先客がいたことに気づく。

 ここに来てはじめて気づくことにも驚きだが、彼女が凛と顔見知りであったことの方が、漸にとっては意外だったらしい。凛に説明を求める。

「おい、いったいどういうことだ? 知り合いか」

「……うん、あとで説明する」

 凛は安藤を見据えたまま、漸の問いを簡潔に答えた。

 彼の関心は目下、安藤に対するアンサーの方が重要なのだろう。依然として凛は、張りつめた空気をまとったままである。

 有無を言わさない凛の無言の圧力に、肩を竦(すく)めた安藤が稍(やや)あって重い口を開いた。

 自身の存在をスルーされたhacchi嬢は、ぷくりと頬を膨らませてむくれている。その表情はなんとも愛くるしいが、取り敢えず今は片隅へと置いておくこととする。

「役者も揃ったことだし、じゃあ説明しましょうか。まずはそうね、挨拶から――」

「こんな時にフザけないでください。回りくどいことなんてせず、要点だけを説明してください」

――ここまで感情をむき出し、ヒートアップした凛など見たことがない。

 碧羽は勿論、漸でさえお目にかかったことのない兄の態度に、ソファで傍観する碧羽と漸は顔を見合わせ困惑に眉をしかめる。
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