イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

「なにを言ってるのよ。この業界、挨拶と自己紹介は基本中の基本よ。それが出来なきゃ、この業界で生きてくことなんて出来ないわよ。そこの顔突き合わせてるふたり! 聞いときなさいよ」

 安藤は如何に挨拶が大事かを力説し、つづいて起立した凛のうしろで顔を見合す碧羽たちを窘める。

 驚いた碧羽は端座し安藤に向き直り、慄く彼女を認めた漸は安藤を睥睨する。

「やだ怖いわね~そんな睨まないでよ。あたしはOM(オフィスマネージャー)として、当然のことを言ったまでなんだから」

 怒気を孕む漸の視線など物ともせず、安藤はにべもなくそう言ってのける。

 安藤は『atelier-TSUBAKI』創立当時より、オフィスマネージャーとして従事する古参なのだ。

 様々な事案や局面を、その都度打開してきたやり手でもある彼に、漸の気迫など通用しなかった。

「はい、じゃあ自己紹介よ~♪ まずはそうね、凛から」

 漸を度外視した安藤は、尚も自己紹介させようとする。つつがなく進めるのが彼のポリシーでもあるのか、一度言い出したことを曲げる気など微塵とないらしい。

 この分では堂々巡りだと悟った凛は、大仰に嘆息した後、居姿を正してhacchi嬢へと自己紹介をはじめる。

「久しぶりだね、桂花(けいか)。どうしてきみがいるの? ニューヨークで活動してたんじゃなかったの?」
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