イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
碧羽は過去五年分の凛を知らない。幼い頃より処世術(よせじゅつ)に長けていた彼は、男女問わずに交友の輪が広かった。
怜悧(れいり)かつ口巧者(くちごうしゃ)な彼の人脈は、計り知れないだろう。
よしんばブロンド美人が現れようと、碧羽は今更驚くこともないと思っていたが――……思い切り驚いてしまった。
誰だ、このゴージャスなブロンド美人は。心でつっ込まずにはいられなかった。
そんな疑問が顔に出ていたのか、凛は碧羽と目が合うなり気まずげな表情で視線を泳がせた。いつも余裕綽々な彼が、体裁を取りつくろう暇もなく狼狽する。
『手の早い凛のことだ、これはなにかある』――と逸早く嗅ぎ付けた漸が、凛に対して歯に衣着せぬ爆弾発言をする。
「おまえらさ、つき合ってたんだろ。つか……エロい関係だったんじゃね?」
凛の身体が瘧(おこり)のようにびくりと震える。心なしか顔色の優れない兄が可笑しくて、漸は日頃してやられている意趣返しができて、胸がすくのであった。
弟にしてやられた凛が、平素を装いつつ漸に向き入り、託言(かごと)がましく抗弁を垂れる。
「碧羽のまえで下品なこと言わないでくれる? 今は僕と桂花は清い関係なんだから。だいたい再開したのだって、僕にとっては偶然なんだ。速攻でフラグへし折ってくるの、やめてよね」