イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

 へし折っているのはむしろ自分なのでは? と、握りこぶしを作りながら弁解する凛に半眼を向ける漸。

 けれどこれはチャンスかも知れない。この機会に凛がhacchi嬢と復縁を果たせば、己が碧羽を口説いて彼氏の座につける――漸は矯めつ眇めつ兄の焦り顔を窺い、心のなかでほくそ笑んだ。

「へえ、『今は』清い関係なんだ。そりゃ、いいや。じゃあ次は俺が自己紹介するぜ」

 宣戦布告の意味も込めて、漸は強い語気で凛に揶揄を飛ばす。つづいてhacchi嬢へと向き直り、安藤の命題を借りて言葉を継ぐ。

「はじめまして。俺は凛の双子の弟で、漸といいます。凛ともども、よろしくお願いします……hacchi(ハッチ)さん」

 慇懃(いんぎん)な所作で、漸はhacchi嬢に一礼をする。果たして期待を裏切らない彼女は、例に漏れず漸の存在にはじめて気づく。

 彼女はつぶらな目を更に大きく開き、漸を凝視したかと思うと胸元で両手を重ねて夢見るポーズを取る。

 みるみる笑顔がこぼれ返り、漸と凛を交互に見やり、そして――

「やだッ♪ ほんとにそっくりなんだ。凛からはなしは聞いてたのよ、漸くんて双子の弟がいるって。はじめまして! 私は『神崎 hacchi 桂花(かんざき ハッチ けいか)』よ、よろしく♪」
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