イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
hacchi嬢の両親が暮らすのは、マンハッタン区アッパー・マンハッタン。アップタウンとも呼ばれるマンハッタン北部の領域を指している。
二十世紀後半に起こったジェントリフィケーション(高級化現象)により、この地区は高度成長の煽りを受けて、都市再生とともに高級住宅街が建ち並ぶ地区となった。
彼女の両親が暮らすアパートメントは、緑あふれる佳景を誇るセントラル・パークが一望できる、ロフト・コンドミニアム(分譲超高級マンション)。
証券マンである彼女の父親と、今は一線を退きモデルエージェンシーを経営する母親が、結婚当時に新居として購入した物件だ。
hacchi嬢もmiddle school(中等部二年)まで親許で暮らしていたのだが、モデル業が立て込むにつれホテルを転々とするようになり、以降も根無し草のような生活を送っていた。
「アンディーが移住手続や住む場所の手配とか、すべて済ませてくれたの。必要な物は凛のママが揃えてくれたから、私はバッグひとつで飛行機に飛び乗ったってわけ」
因みに彼女が日本へ到着したのは、ほんの数時間まえのことだ。
安藤が空港まで迎えに行った時から、彼女のハイテンションはつづいでいる。……この疲れ知らずと、安藤は心で悪態をついた。