イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
悪魔退散! と、正義のヒーロー漸がアオスジを湛えて戻ってきた。
「や、やだなあ……なに怒ってるか知らないけど、ソレぜんぶ漸の誤解だから」
「ああ゛ッ!? 五階も六階もあるか。てめえだけは、マジに油断ならねえな」
漸に首根っこを鷲掴まれた凛は、「いや、五階じゃなくて誤解だよ」――と、更にイラつく発言をかまして自爆する。
憤怒の限界を超えた漸少年は、碧羽に「先に休憩してろ」と言い残して去ってゆく。その傍らで、凛は首根っこを掴まれたまま、機材の合間へと引きずられてゆくのであった。
「あ~あ、行っちゃった。でも……なんで漸は怒ってたのかな。まあいっか、さあ休憩しよう♪」
碧羽の無自覚な男泣かせ思考も、ここまで来るとすでに特技として確立するのではないか? などと感心しながらも、ストーリーは転がる石が如く急展開を見せてゆく。
碧羽は軽い足取りで向かった先は、休憩用に設えられたスペースだ。スタッキング・テーブルに様々と置かれた、軽食やペットボトルのお茶やジュースたち。
嬉々として休憩に入った碧羽は、カラフルなスプレーチョコがかかったフリンクルドーナツ目当てに、ドーナツボックスの許へと足を進める。
けれども先客がいたようだ。ドーナツボックスへと陣取る、抜群のプロポーションを誇る女性が、ブルネットの髪を揺らしながらドーナツを……貪っていた。