イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
碧羽は恐るおそる、彼女の許へと近づいてゆく。
「……桂花ちゃん?」
「!? ああッ、碧羽ちゃん~~~!」
桂花(けいか)とは、hacchi嬢のファースト・ネームだ。碧羽とhacchi嬢は、安藤の爆弾宣言以降、互いを下名で呼び合うほどに打ち解けることができた。
碧羽が背後から声をかけた途端、hacchi嬢は素晴らしい瞬発力を駆使して、碧羽にふり向き飛びついた。
まさに俊足、『モデルはそうこなくっちゃ♪』などと言っている場合ではない。
突然飛びかかって来たhacchi嬢に対し、碧羽は盛大に驚いてしまう。ぎゅっと抱きしめられた瞬間、「グエッ」と蛙のような呻きが碧羽の口から漏れた。
非常に苦しくはあるが、彼女から只ならぬ負のオーラを感じ取った碧羽は、彼女の背に腕をまわしてポンポンとリズムをつけてあやしてやる。
「ねえ桂花ちゃん、どうしたの? なにか嫌なことでもあった?」
しつこいようだが、碧羽はhacchi嬢にベアバッグをかけられ、非常に苦しんでいる。
だがしかし、ここで『苦しいからロープを掴ませろ』などと言える雰囲気ではなかった。
碧羽は彼女に何があったかと問う。間髪入れずに、hacchi嬢が十八番のマシンガントークが火を噴いた。