イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

 * * *

「――そう、それは気分が悪いよね。それでさっき……ドーナツのヤケ食いしてたんだ」

「そうなの。体型維持とかあるし、ダメだって解ってるんだけど……こう『きぃームカつく!』ってなると、操られたみたいになっちゃって」

 「私の意思じゃないの、悪魔の仕業よ」――と、hacchi嬢は胸で十字を切りながら悪魔に責任転嫁する。

 けれども碧羽は悪魔と聞いて、『そういえば凛は大丈夫かなあ』などと、悪魔つながりで凛の所在を思い出すのであった。

 碧羽はフォトグラファーである茂上に、「ちょっと外の空気に当たってきます」と断っておいて、hacchi嬢とともにスタジオを抜け出した。

 廊下を進んだ先にある非常扉を開き、吹き抜けの非常階段へと出た碧羽とhacchi嬢。スタジオ内とはまた違う、オフィス街特有の喧騒が耳につくが、構わず碧羽ははなしを進める。

「でもその子、よくこのビルが分かったね。それに今日、撮影があるって知ってたんでしょう? 凛がはなしたのかな」

 碧羽はチョコにまみれたhacchi嬢の口許をハンカチで拭ってやりながら、不明瞭なる存在が取った行動と凛との関わりに、チョコまみれの彼女とともに訝しんだ。

「ううん、凛がはなす訳ない。だって、あの女とはもう別れたみたいだし。凛は別れた女とは交友もたないもの! だから私とだって……」
< 138 / 151 >

この作品をシェア

pagetop