イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
「――……羽ちゃん。ねえったら、ちょっとどうしたの? 碧羽ちゃんてば」
「……え、あれ? わたし」
「『え、あれ?』じゃないよ、もう! 碧羽ちゃんてば遠い国に行っちゃうし、いくら呼んでも戻って来てくれないから私……もう少しで脳天チョップ食らわそうかと思ったんだから」
いや、脳天チョップなどと、そんな古い――碧羽はhacchi嬢の顔をまじまじと覗き込み、『桂花ちゃんて、ほんとうにニューヨーカーなの?』と、彼女に対する出生の秘密に疑念を抱いた。
ともあれ今は問題視する事案は凛の元カノであり――そこまで考えて、碧羽はひとつの可能性……いや名前を思い出した。
「有栖川 由梨子……」
「そう! そうよ、有栖川。あの女、そう名乗っていたわッ! 碧羽ちゃん、知ってるの?」
「知ってるっていうか……」
――有栖川 由梨子(ありすがわ ゆりこ)
翡翠ヶ丘女子学園、高等部二年。有栖川は淑やかなる内面と比例するかのように、艶やかな牡丹を思わせる日本人形のような女性で、翡翠ヶ丘学園の男子生徒にも人気を博す美少女だ。
有栖川は男性から数歩下がって歩くような、且つ又今般では絶滅危惧種でもある『大和撫子』を彷彿させる、スーパー女子高生でもあった。